先日の記事で少し触れたBOSEのモノラルパワーアンプMODEL1702は、2台セットのラックマウントステー付きを格安で入手した。
長期に渡って酷使されていたらしく、ボリュームのツマミは無くなって軸も少し曲がっている。全体的に油のような物がうっすらと塗られたような状態で、手で触ると少しネチャっとする。
入手時の説明では「片方は普通に使える状態で、もう片方は全く動かない。古い物なのでジャンク扱い」となっていた。試しに電源を入れて見ると、確かに片方は普通に音が出るけれど、もう一つはうんともすんとも言わない。
ネットで調べたら、この製品は1984年3月発売だそうな。既に34年経過しているので、それなりに劣化している筈だが、出てくる音は普通だ。
まずアンプ本体を外してマウントステーを見ると、全体的に薄い茶色の汚れが付着している。
裏側もやはり汚れている。
このままでも差し支えないが、せっかくバラしたので古歯ブラシと石鹸で汚れを落とした。
内部を調べ、序でに他の機材も調べて交換の必要な電解コンデンサ類をまとめたものの、名古屋・アメ横の店では扱っていない物ばかり。なので、耐電圧の高いコンデンサ類はRSオンラインで、その他は秋月通商に発注した。
ギターアンプF100-212・ベースアンプF100-115B・ローランドJP-8000・ヤマハDX-7等の部品も併せて頼んだので、かなりの点数になった。
忘備録も兼ねて、撮影しながら早速分解する。
まず、本体裏側の長いネジ3本を外す。
これだけでは未だ外せず、この程度に開けるのが精一杯だ。
更に2本ネジを外す。このネジには何故かワッシャーを噛ませてあった。
すると、上下が2つに分かれる。
AC100V電源ケーブルの抵抗値を調べる。
30年以上経過しているのに2本共抵抗値は低く、まだ普通に使える状態である。
ネジロック材が塗られたネジを外すと、トランスと筐体を分離できる。
筐体はかなり汚れているので、古歯ブラシと石鹸で洗った。
フロントパネルを外し、ボリウムや電源スイッチなどを固定するステーも外す。ボリウムには問題は何も出ていないので、今回は触らない。
パワーモジュールを固定しているネジ2本を外すと基板が筐体から外せる。
更にリアパネルを固定しているワッシャー入りのネジ2本も外す。
これで筐体上側が外せた。パワーモジュールが固定される部分には放熱用シリコングリスが塗ってある。
手元にシリコングリスは無いので、洗い流してしまう訳には行かない。なので、全体を拭き掃除した。
リアパネルには6V300mAのDC出力がある。
恐らく当時併用する機材の電源を供給する為だったんだろう。この出力を受け持っているのは3端子のレギュレーターだ。放熱の為に筐体にネジ止めされている。
リア中央にはスピーカー機種によってイコライジングを変える切替スイッチと、キャノンコネクターのターミネータースイッチがある。
リアパネルを固定しているネジ全てを外し、更に入力側キャノンコネクタの配線を外すと、やっとリアパネルの基板を外せた。
スイッチにはゴミ侵入防止のスポンジが貼ってあったが、一寸触っただけで粉々に砕けてしまった。
このまま放置する訳には行かないので、金具を取り外して清掃しなければならない。
ICはJRCのオペアンプ2041DDが使われている。これは4558の上位互換で、ノイズや周波数特性が良いらしい。
スピーカー用イコライジングをこのIC一つで行っているらしい。
載っている電解コンデンサー全てを交換する。
スイッチは密閉型じゃないから内部が汚れているかも知れない。取り外して分解する。
案の定、内部は汚れや錆が浮いている。
特に、接点同士を接続する端子の汚れはかなり酷い。
折ってしまわないように注意しながら接点を拡げる。接点は錆で黒くなっている。
NeverDull(ネバーダル:金属磨き)で部品を折らないよう注意しながら磨いた。
接点全てを磨いたら組み立てる。
スイッチのクリック感は小さな金属ボールとバネで作り出されている。
これも洗浄してスイッチを元通り組み立て、元の場所に収めてハンダ付けした。
使う事は無いとは思うけれど、念の為6Vレギュレーターのコンデンサを替えておいた。
電源回路の基板に載っているコンデンサはこのサイズでないと収まらないので、同じサイズのコンデンサを探して発注した。
外して見たら、何故か全体的に煤けていた。
基板上に残っていたコンデンサ固定用のボンドは熱でパリパリに乾き切っている。
何故か基板はハンダがてんこ盛りになっている。大電流が流れる場所だからだろうか?
コンデンサを外したらレギュレーターは78L12と判った。
基板上のヒューズは0.5Aが使われている。
電力増幅部(パワーアンプ部)にはサンヨーのSTM084Gが、スピーカーリレーには第一電機のDH2SUが使われている。
この基板上の部品も全体的に煤けている。
裏返すと、この基板もハンダが沢山盛られている。
使われていたコンデンサは汎用で小さいが、発注したのはオーディオ用なのでサイズがデカい。
基板上にスペースはあるけれど、収まるかどうか一寸心配。(汗)
基板上のコンデンサ全てを交換したが、やはり一番下のコンデンサは基板から少しはみ出している。(滝汗)
基板を元の位置に収めるが、基板の両側を固定していた金具はコンデンサの出っ張りで留めることができない。まぁ、片方固定されていれば通常は大丈夫なので、今回はこのままとする。
後は元通り組み立てれば簡単なオーバーホール作業は完了である。
交換したコンデンサは結構な量になった。
高温の過酷な場所に長期間置かれていたようで、一番大きいサイズのコンデンサ以外は全てESR(等価直列抵抗)がかなり高い。
早速音を出してみる。入力にはPhilJonesBassのベース用ヘッドフォンアンプBass Buddyを接続し、スピーカーはモニターJSP-2020を接続する。
出てくる音は...全体の音感(力感)は変わらないものの、以前よりも遥かに抜けの良い音になった。やはり信号経路上のコンデンサが劣化していたようだ。
この1702を入手しようと思ったのは、実はネット上でたまたま見かけたブログ(現在未更新の状態)でBOSE1702とPeaveyのベースキャビネット210Xを組み合わせてお使いになっているのを見て、「なるほど!」と思ったからである。
# 自分で気が付かなかったのは何とも情けない...(;..)/。
実は、今使っているヤマハのベースアンプF100-115Bはどうも高音域が落ちているような気がするので「そろそろオーバーホールするか?」と考えている。けれど、まともなベースアンプはこれが初めてなので、本当に高音域が出ないのかどうかの判断基準が拙者には無い。だから、「オーディオ的なシステムで素の音を確認し、それを基準にして判断しよう」と考えたのである。ただ、際限なく費用が使える訳ではないから、今回のような機材となった。
F100-115Bをオーバーホールしてから音を比較してみて、高音域の出方があまり変わらないようであれば内蔵スピーカの問題と判断が付く。もしF100-115Bの高域がまだ弱いのであれば、それはアンプのキャラクターという事になる。
もう一つの1702は全く音が出ないので、そちらも非常に気になる。どちらも同じ場所で使われていたので、内部は同様に劣化している筈だし故障の原因も調べてみたい。
比較対象のF100-1115Bもオーバーホールしなきゃならんし、それ以外にも修理待ちの機材が沢山ある。しばらくの間は忙しくなりそうだ。(汗)
この記事へのコメント
みうさぎ
しばらくは~奮闘できそうですねっ
楽しみな~時間だぁ~(^^)/
Rifle
そうそう、相変わらずなんです。(笑)
このパワーアンプはギターアンプやベースアンプと違って色付けが無いんで、当分はリファレンスとして活躍して貰えそうです。