格安で入手したベースアンプ・ヤマハF100-115Bは、2年ほど前に我が家にやって来た。
スピーカは15インチ(38cm)が一つ、バスレフ型エンクロージャーに収まっている。シンプルな構造で、出てくる音も素直だ。1980年のカタログにも載っている当時の最高機種で、今でもあちこちのスタジオなどで現役で使われている。
手に入れた時点で状態が非常に良く、あえて何もメンテナンスしていなかったが、最近になって子供が「高音域が出難い」と言うようになった。製造から既に40年近く経過しており、電解コンデンサ類は交換時期を過ぎているものの、音を聞いてもノイズフロアはそんなに高くないのでトランジスタ類の交換は必要なさそうだ。
BOSE1702等、他のと一緒に交換用コンデンサを仕入れたので、部品が全部揃ってから作業を始めた。
本体上にあるネジ全てを外してスピーカの線を抜き、パネル毎後ろに引くと、回路の部分がすっぽり抜ける。
卓ライン取り用のXLRアウトはトランスが使われている。
今時の機材はお手軽に電子回路で組んであるものばかりだが、
# だからコールドとグランドのショートといった思いもよらぬトラブルも多かったりするらしい。
こちらは随分とお金を掛けている。流石トップの機種だけの事はある。
まず電源回路から作業する。交換するコンデンサは2個だけだ。
外したコンデンサ(画像左)と新しく取り付けるコンデンサ(画像右)は大きさがかなり違う。
古いコンデンサを自作の簡易ESRメータで測ると、値は十分に低く問題無い。
しかし、一つは液漏れを起こした痕があった。
交換したら一寸あっけない感じになった。
次はプリアンプ部だ。
古いコンデンサを片っ端から外す。外したら、基板側に液漏れの痕が残っていた。
外したコンデンサは、どれもESR値はそんなに悪くない。
しかし、コンデンサの頭を見ると透明な樹脂状の物が盛り上がっている。
液漏れしてそのまま固まったらしい。
古いコンデンサ(画像左の列)と新しい方(画像右の列)では、全体的に新しい方が小さい。
個数は多くないので、作業は短時間で終わった。
次はヒートシンク(放熱器)に取り付けられているパワーアンプ部だ。
パワー部だけに耐電圧の高いコンデンサが多いが、やはり新しい方(画像右の列)が小さい。
一部のコンデンサはESR当た値が少し高めだった。
こちらも数は少ないので、交換には大して時間はかからない。
プリアンプ部と接続するピンもNeverDull(ネバーダル:金属磨き)で磨く。
交換の最後は、大きなブロックコンデンサだ。配線は内側にある。
古いコンデンサ(画像左)は「ブロック」というだけあって、とても大きい。
固定バンドは当然ブロックコンデンサに合わせてあるので、新しいコンデンサだとやや大き過ぎる。
バンドを少し曲げて収まるようにした。交換後はだいぶスッキリした。
序でにボリウムも外す。
ボリウムのケースを外す。
摺動抵抗部全体を覆うような形状の白い樹脂部品の下に電極がある構造で、しかもカシメてある。素人では分解できない。樹脂部品の僅かな切れ目から見ると、摺動抵抗部には軸を潤滑しているグリスが流れ込んでいた。
このまま放置すれば、遅かれ早かれいずれはガリが出てしまう。なので、その切れ目から少しずつNeverDullで全周を磨いた。
クリック付きのボリウムは、イコライザの部分にだけ使われている。
分解すると、ケースに小さな穴を開けて、そこに軽くハマるように金具が取り付けられているけれど、基本的な構造はクリック無しと全く同じだ。
こちらも同様に全周を拭き取った。
外したツマミは結構汚れている。
古歯ブラシと石鹸でゴシゴシ洗ったら奇麗になった。
入手時から一つだけツマミの頭が取れてなくなっているので、有り合わせの材料でテキトーに直す。
エリクサーの弦が入っていた厚紙ケースを丸く切り抜いてボンドを塗り、食べ終わったチョコパイの袋も丸く切って貼り合わせれば出来上がりだ。
チョコパイの袋の内側は艶があって、他のツマミとは見た目がだいぶ違うけれど、まぁ気にしない事にする。(笑)
古い物だけに、パネル表面も結構汚れている。
石鹸だけでは取り切れないので、マルチクリーナーを使ったら奇麗になった。
念の為にパネル全体にユニコーンのカークリームを薄く塗り広げて乾拭きした。
これで作業は完了である。
確認の為、モニタースピーカJSP-2020に接続して動作を確かめた。古いアンプだけど、今でも非常に良い音を奏でる。低域から高域まで、どこかを誇張する事なく素直に音が出て来る。ハーモニクス和音も美しい。今でも現役で使われている理由は、この音の良さだと思う。
序でに、練習用ヘッドフォンアンプとして使っているPhilJonesBassのBass BuddyとBOSE1702の組み合わせと、DBXのD.I.ボックスdB10とBOSE1702の組み合わせでも音を出して比べて見た。
使ったベースはAtransia(アトランシア)のStealth6(フレッテッド6弦)である。
Bass BuddyとBOSEの組み合わせだけを聞いていれば確かに良い音なのだが、F100-115Bの重心の低い低音を聞いてしまうと中低域を少し持ち上げただけのような印象になってしまう。具体的には、Low-Bの弦になるとBass Buddyだと持ち上げてある帯域から外れて僅かに弱くなるような感じなのに対して、F100-115Bはそのまま素直に出てくる感じだ。グライコは自分が望む中心周波数とは一寸ずれているようで、幾ら調整してもF100-115Bのような素直な低域にはならなかった。
dB10とBOSEの組み合わせは、昔ラジカセに直接突っ込んで出していた音にソックリ。(笑)
# 楽器買うのが精一杯でアンプが買えず、ラジカセに突っ込んでた人って多いんでは?(^^;
Bass Buddyよりも中低域から低域までをほんの少し控え目にしたような感じ。dB10は電源不要のパッシブだからか音量はかなり小さく、BOSE1702をフル・ボリウムにしても大した音量にはならない。スタジオとかで使うのなら、+20dB程度のプリアンプが必要だ。
元のキャビネットに収めて音を出したが、高音部の不足は感じられなかった。出力側コンデンサの劣化で高域が出なくなっていたようだ。
これで安心して使い続けられそうだ。
この記事へのコメント
たま
大学のとき入っていたサークルで部長がこのベースアンプを使ってました。バスレフではなくてバックロードホーン型式だったかと。いままでに見たことのない大きさと箱の形式だったので覚えています。
が、しかし、買って1年も経たないうちに部室が火事で燃えて灰になったのでした。(TωT)
Rifle
ありゃぁ、灰になっちゃったとは残念でした。
そうそう、よく見たらバックロードホーンでした。(^^;)
Take-Zee
今回、記事を拝見していて、ふと思いました。
なんでも修理するのは驚きませんが・・・
なんで、こういう機器がたくさんあるのか、
不思議に思いました。
Rifle
若い頃に欲しくても買えなかった機材は今でもやっぱり買えないので、「問題あり・ジャンク」などの格安モノを手に入れて直して使っています。
お陰で、ここ5年ほどで我が家はプチレコーディングスタジオのような状態になってしまいました。(笑)