作成した実体配線図を元に、何度も見直しながら回路図を起こした。
これを見ると、入力された信号はスピーカーの種類に応じたイコライザ回路を通って電力増幅回路(要するにパワーアンプ回路)に入り、増幅された信号はスピーカー出力となって出て来るようになっている。
一般的なアンプと同様、このアンプにもスピーカー保護回路が入っている。電源投入時の急激な電圧変動に依る「ボコッ」という音や、回路の故障で出る異常な電圧をカットする為である。その部分を抜き出すと、こんな感じ。
正常であれば、電源投入により抵抗R707・R708を通って流れる電流が電解コンデンサC712に流れ込む。すると、C712の上の端子の電圧が0Vからどんどん上がって行く。およそ0.7Vまで上昇するとトランジスタQ703がオンになる。すると、リレーのコイルL701に電流が流れて接点がオンになり、スピーカー出力端子と繋がる。R707・R708とC712の値でオンになる時間が決まり、計算してみると25ms前後となる。
このアンプは出力部に直流カット用の大容量電解コンデンサが入っていない為、このような短い値に設定されているらしい。
一般的なアンプにはスピーカー出力側に大容量コンデンサを挟んであるので、電源を入れるとそのコンデンサを満杯にするまで突貫電流が流れ続ける。この時、スピーカーがそのまま繋がっていると「ボコッ」という大きな音がする。音がするだけなら未だ良い方で、下手すりゃスピーカーを飛ばして(スピーカーのボイスコイルを焼損させて)しまう。
コンデンサの容量にも左右されるけれど、一般的には数百ms程度の時間が経てばコンデンサは満充電状態になる。だから、それよりもう少し長い時間が経ったら、遅延回路でリレーを動かしてスピーカーを接続するのである。
正常なら電源投入して直ぐ「カチッ」というリレーの音がする筈なのだが、入手した時点で既に無音の状態だった。「ということは、保護回路が働いているってこと?」あちこちテスターで測ってみたら、パワーモジュールの出力ピンには37V強の電圧が出ていた。
この状態だと、R711・R712に電流が流れてトランジスタQ702がオンとなる。するとトランジスタQ703のベース電圧がほぼゼロになるのでQ703がオフになる。Q703がオフになるとL701に電流が流れず、リレーがオフになる。だからスピーカーからは全く音が出ない。
音の出ない原因はこのモジュールの故障だった。
このサンケンSTK084Gは、1980年代あちこちで使われていたパワーアンプモジュールで、最大出力は50Wだ。
既に廃番で、国内では入手できない。
近年はデジタルパワーアンプモジュールになっていて、動作電源電圧12V前後と低い。だから、そういう物を流用しようとすると、電源回路をそっくり入れ替えなければならず、かなり面倒且つ大掛かりな作業になる。
やっぱり、モジュールを探すか...。
(続く)
この記事へのコメント
みうさぎ
探すのも楽しみだよねぇ
そ~れ頑張れ~(^^)/
Rifle
探したけれど国内には無いんで、海外で探してます。
セカンドソース(後発の同等品)がありそうなので、何とか修理できそうです。